
北海道の今
カムイの大地の妖精たち エゾシカ 恋の季節、縄張りを主張
2020年10月16日
日没時間がすっかり早まった根室管内の野付半島。夕日を浴びて光るススキの中を、立派な角のエゾシカが悠然と歩く。
秋が深まると、エゾシカは交尾期を迎える。赤みを帯びた体色は黒褐色の冬毛に替わり、年輪を重ねて大きくなった角は枝分かれしながら長さ65センチに達する。身体も角も大きくなったオスが複数のメスを独占しようとハーレムを形成する。
夕闇が迫る中、「フィーヨー」と鋭い鳴き声が聞こえてきた。エゾシカのオスが縄張りを主張し、ほかのオスの接近をけん制するラッティングコールだ。吹き付ける北風に独特の鳴き声が重なり、日暮れ間近の野付半島に晩秋のもの悲しさが漂う。
交尾期を終えると長い長い冬は目の前だ。積雪が草食動物のエサを覆い隠す。生き物たちの命運を左右する厳しい季節が到来する。
(提供:北海道新聞)