
北海道の今
夕日の岬 夏は優しく 潮騒の子守歌
2020年09月11日
太陽が赤みを増しながら、夕なぎの海に近づいてきた。「ザザーッ、ザザーッ」。寄せては返す穏やかな波に映り込んだ。
夕日の名所として知られる留萌市の黄金岬。日中、岬で人気の磯ガニ釣りに歓声を上げていた家族連れが息をのんで水平線を見守った。
こうした光景からは想像できないが、黄金岬は「世界三大波濤(はとう)」の一つと呼ばれるほど、荒波が押し寄せる景勝地だ。冬は「ゴォー」という海鳴りが響く。岬で食堂を営む佐藤恵子さん(63)はその変貌ぶりを長年、見てきた一人。「夏の優しい表情が、冬にはまるで怒りに満ちた顔に変わる」。こう例えて説明してくれた。
秋には台風に襲われ、打ち寄せる波で跳ね上がった大きな石が近くの店のガラスを割り、海岸線の道路を埋めたこともあったという。夏の一時期に見せる「ほほ笑み」は、実は幻の姿なのかもしれない。
太陽が水平線に沈むと、空はオレンジ色と紺色の2色に変わった。友人2人とバイクツーリングで岬の小さなキャンプ場に立ち寄った宮城県の亀山満さん(62)は「仲間のいびきが気になるが、目覚めにテントで聞く波音は楽しみ」と笑顔で語った。
潮騒を子守歌に旅の疲れを癒やし、明日の旅路に思いをはせていた。
(提供:北海道新聞)