写真:復活を信じて、台湾には帰らない
北海道の今

復活を信じて、台湾には帰らない

2021年03月30日

いつもなら、外国人であふれる冬のニセコ地域。新型コロナウイルスの感染拡大が続く今冬は、激減している。それでもゼロではない。この町に定住を決めた外国人たちがいるからだ。

 5年前から後志管内俱知安町に住む台湾人スノーボーダーのボニー・ウさん(32)。ニセコ地域を、こう表現する。「滑雪聖地(ファシュエシェンディ)」。滑る雪で「スキー」。つまり、スキーの聖地―。台湾では憧れの場所だという。

 台北市出身。中華系の観光客向けのスキーツアー会社でマネジャーを務める。

 両親はそろって大の海外旅行好き。幼いころから世界各国を訪れた。新しい発見にあふれた異国に、憧れを持つのに時間はかからなかった。「いつか、海外で暮らしたい」。そんな夢を抱き、台湾の大学を卒業後、ワーキングホリデーの仕組みを使って飛び出した。

 転機は2014年。ニュージーランドのリゾートで、スノーボードに出会う。真っ白な新雪を滑る爽快感。何度も転びながら、その感覚に夢中になっていく。働き先は現地の日本料理店で、周りは日本人ばかり。なじもうと独学で日本語を勉強した。「スノーボードと日本語を仕事にしたい」

 俱知安に来て驚く。日本人が全然いない。アジア系、欧州系など外国人ばかり。中でも中華系の観光客は数年間で爆発的に増加した。中国語に加え、日本語と英語の3カ国語を話せるトリリンガルのボニーさんは、冬の4カ月で1年間分を稼げる。夏はアウトドアを楽しむ日々が待っている。

 ただ、それは20年2月までの話。新型コロナで全てが一変した。この冬、中華系の観光客は、ほとんどゼロ。会社の売り上げは前期比99%減の惨状だ。仲間も次々に去った。「もう、台湾に帰ろうか…」。そんな思いが何度も頭をよぎる。

 ボニーさんは今、日本語の猛勉強に明け暮れている。「ここは私の夢がかなう場所だから」。日本人には分からないニセコの「輝石(きせき)」。それが彼女の視線の先に、しっかり映し出されていた。

(提供:北海道新聞)

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