写真:80歳SL現役続行 釧網線「冬の湿原号」 整備が支える「宝」今夏改修
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80歳SL現役続行 釧網線「冬の湿原号」 整備が支える「宝」今夏改修

2021年04月19日

【釧路】黒い巨体から煙と蒸気を吐き出し、釧路湿原を走るSL冬の湿原号。道内路線で唯一の蒸気機関車は昨年「80歳」を迎え、140年続くSL文化もけん引する。JR北海道は現役続行にゴーサインを出し、今夏から4億円かけて客車5両と共に全面改修に入る。絶滅寸前のSLを「道民の宝」として守り伝える現場を訪ねた。

 観光列車の湿原号は今冬も2月末まで、JR釧網線釧路―標茶間(48・1キロ)を往復した。運行は釧路運輸車両所の機関士3人と機関助士6人を中心に整備、車掌、ガイドらが支えた。

 湿原号のSLは1940年(昭和15年)7月に神戸市で生まれ、釧路機関区で活躍した「C11形171号機」。75年から23年間、釧路管内標茶町の桜児童公園で展示された後、99年に約5千万円かけ復元された。2000年に「里帰り」し、釧網線を走る。

 全長12・6メートル、重さ68トン、610馬力。前方の3分の2は蒸気機関(ボイラー)が占め、後方に運転室、石炭庫と水タンクがある。

運行前の車庫内は、機械音と煙を吐き出す音、石炭と潤滑油の臭いに包まれる。ボイラー技士の資格を持つ機関士と機関助士がタッグを組んで運転し、点検。石炭を火室に投げ入れたり、ハンマーを片手に足回りを見て回ったりと忙しい。

 SLは蒸気が全ての動力源。車輪を回転させ、客車のブレーキ用の圧縮空気もつくり、ライトや自動列車停止装置(ATS)を動かす発電機も回す。

 運転室左側に座る機関士が前進ギアに入れると、蒸気が機関車の前方左右二つのシリンダーに入り、3軸6輪につながるピストンを動かす。「シュッ、シュッ、シュッ」。巨体が前に進みだし、蒸気が冷気に触れて辺りを曇らせる。

 連結する客車5両も52~74年製の年代ものだ。石炭を積み込み、「ボォー」。高らかな汽笛を響かせ、釧路駅からの旅が始まる。

 最高速度45キロ。釧路川の鉄橋を渡り、雪の釧路湿原に入る。釧路湿原駅を出ると見せ場が始まる。右カーブの上り坂で、1キロ進んで15メートル上がるが、SLには急な坂。「ボッボッボッ」。力強く煙を噴き上げる。投炭作業に当たる機関助士の佐藤学さん(45)は「少ない石炭で効率よく蒸気を上げるのが腕の見せ所」。

 標茶駅まで片道1時間半。車内には湿原の動植物を説明するガイド5人が交代で乗り込む。その1人、元機関士の小林保則さん(74)はSLの語り部。「80歳の大先輩は第2の『人生』でもよく働く」と笑う。

帰路はバック運転。機関士の成田英機さん(58)は「機関助士と、あうんの呼吸で運転する。ブレーキが一番気を使う」と話す。

車庫に戻ると、翌日に向け整備が始まる。SLはベアリングを一つも使わない特殊な構造。車両技術主任の高梨智昭さん(48)は「特別な部品ばかり。壊れたら、もう走れない」。

かつてJR北海道はSLニセコ号(札幌―蘭越間)、SL函館大沼号(函館―森間)などを季節運行したが、安全基準の見直しで14年度を最後に廃止。SL運行は釧網線だけとなった。

今夏、冬の湿原号はトレーラーで苗穂工場(札幌)に運ばれ、1億円かけ8年ぶりの全般検査を受ける。客車は3億円かけトイレの洋式化や発電用エンジンの交換など全面改修される。

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(提供:北海道新聞)

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