写真:名門ワイナリーの確信
北海道の今

名門ワイナリーの確信

2021年05月04日

残雪が早々に消えた4月上旬、函館のまちを眺望できる丘陵地のブドウ畑で、赤ワイン用の品種「ピノ・ノワール」の幼木の手入れが行われていた。

 現在5ヘクタールのブドウ畑は、300年近い歴史があるフランス・ブルゴーニュのワイナリー「ドメーヌ・ド・モンティーユ」が営む。ブドウ栽培の責任者バティスト・パジェスさん(34)は「函館は雪が少ないから、冬に木を傷めず、病気に強い木を育てることができる」と熱っぽく語った。

 ピノ・ノワールはブルゴーニュ原産で、同社の赤ワインの代名詞。世界最高級ワイン、ロマネ・コンティの原料としても知られ、繊細な味と香りで世界中のワイン通を魅了してきた。だが、ブルゴーニュは近年、地球温暖化による気温上昇で収穫時期が早まるなどワイン造りの変革を迫られている。

 モンティーユが新たな産地として目を付けたのが北海道だ。日本の本州のように蒸し暑いとワインに必要なほどよい酸味が得られない。同社は2017年に函館に農業法人を設立、ブドウ畑の水はけを良くするため、仏企業と北大の研究者が共同開発した地下排水溝を張り巡らせた。23年にも醸造を始め、製品は国内のほか欧州などに輸出する。

 本州資本の北海道進出も相次ぎ、道内のワイナリーは10年代に入って急増。09年の14軒から今年3月末に47軒となった。老舗ワイナリーが栽培の適地に選んだ北海道だが、複数の道内ワイナリー経営者は「かつては世界を語れるような味は造れなかった」と話す。

■品質向上、気候も追い風

 「最初のころのピノはとにかく酸っぱくてね。ピンク色のロゼよりも薄い色しか出なかったんだよ」。後志管内余市町の木村農園の木村幸司さん(44)が懐かしそうに語った。

■地道な作業で

 木村農園は、はこだてわいん(渡島管内七飯町)や北海道中央葡萄酒(ぶどうしゅ)千歳ワイナリー(千歳市)と契約し、1980年代後半から赤ワイン用の品種ピノ・ノワールを作り続ける草分けだ。当初は病気にかかる実が多く、品質も伴わなかった。木村さんと父の忠さん(71)は余市の気候に適し、病気にも強い株を選抜。株から苗木を育て、少しずつ増やすという地道な作業を繰り返した。品質も収穫量も安定するには20年以上の歳月が必要だった。

■「最適の場所」

 地球温暖化による気温の上昇も生産を後押しした。NPO法人ワインクラスター北海道(小樽)によると、ブドウ栽培の指標となる4~10月の道内の積算温度は98年ごろか

ら、ピノ・ノワールの栽培に適しているとされる1200~1389度に入り始めた。2010年以降はほぼこの温度帯を保っている。

 一方で山梨や長野など本州のブドウ主産地は1389度を大きく上回り、同NPOの阿部真久代表理事(47)は「道内が日本で最もピノ栽培に適した場所になった」とみる。

 さらに、98年からピノ・ノワールを作り始めた三笠市の山崎ワイナリーが良質なワイン造りに成功したことで、志の高い造り手を道内に呼び込んだ。「豪雪で、寒い空知でもピノが栽培できるのなら」と余市町に10年、長野県出身の曽我貴彦さん(48)が「ドメーヌ タカヒコ」を開業。余市では36年ぶりの新規ワイナリーだった。

 曽我さんは現在、2・6ヘクタールの畑でピノ・ノワールだけを有機栽培する。野生酵母で仕込んだ代表作の赤ワイン「ナナ・ツ・モリ」は世界的な知名度を持つデンマークのレストラン「ノーマ」に出荷している。

■後進育成に力

 栃木県のワイナリー時代に曽我さんの上司だった米国出身のブルース・ガットラブさん(59)も岩見沢市に10R(とあーる)ワイナリーを開設した。2人は道内で新規開業を目指す人の指導にも力を注ぐ。ワイン研究で実績のあるカリフォルニア大デービス校出身という経歴もあるガットラブさんは「北海道は独特の気候でワイン造りの歴史が浅い。優秀な仲間を増やして意見交換を重ねた方が早く、いいワインができる」と後進を育成する理由を語る。

 2人のもとからは既に10組以上が独立。巣立った人材は各地でワイン産業に携わり、10年代に入って道内でワイナリーが急増する一因となった。

 曽我さんの下では4月から、世界最難関の資格「マスターソムリエ」を日本人として初めて取得した高松亨さん(26)が修業を始めた。曽我さんのワインが持つ味と香りのバランスの良さに衝撃を受け、余市への移住を決めたという。

 「自分のワインを世に出しながら、輸出するのにふさわしい余市や北海道のワインと、海外をつなぐ仕事をしたい」。高松さんのような若い世代が世界で力を試す時代がすぐそこまで来ている。

 道内でワインやウイスキーなどの製造所の開業が相次いでいる。「新風 北の美酒」第1部では、成長し続ける道産酒の品質向上への取り組みを掘り下げる。(経済部の拝原稔が担当し、5回連載します)

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(提供:北海道新聞)

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