
「海の学問」アクセス気軽に 北大水産院がネット教材公開 500テーマ、多言語対応
2021年11月08日
海のトップサイエンティスト発掘へ―。水産科学を担う人材の育成につなげようと、北大大学院水産科学研究院(函館市港町)が、インターネット上での教材の一般公開に力を入れている。動画などを通し、北大生に限らず、誰もが海の学問に気軽に触れられる環境を整えた。キャンパスの垣根を越えて学びを提供する、新しい「未来投資」の形といえそうだ。
「優秀な研究者を生み出すため、われわれが蓄積してきた成果を惜しみなくオープンにしていきたい」。こう語るのは、取り組みを主導する同研究院の向井徹教授。「高校生でも、他大学の学生でもいい。どんどん海の教材に触れ、勉強してほしい」と呼びかける。
同研究院は、オンラインを活用した教育プログラムを作成する「バランスドオーシャン事業」を2019年度に開始。若い世代の海洋研究への興味を高めようと、オンライン講義が一般的になる新型コロナウイルス禍以前から準備を進めた。昨年10月に一般公開したホームページ(HP)には基礎的な内容を中心に、計500に上るテーマの教材が公開されている。
HPから見ることができるのは、学習用のソフトウエアを使った特設サイトと、動画投稿サイト「ユーチューブ」の専用チャンネル。2本立てのプログラムをLearning and Study by Balance de Ocean Systemを略した「LASBOS(ラスボス)」と名付け、周知を図っている。
特設サイトでは、テーマごとにタイトルを付けて、紹介する。「北極の海」では、北極海域の海氷が減少している現象や北極圏に位置するグリーンランドでのプランクトンの調査などを解説。魚類、甲殻類、軟体動物などをまとめた「集まれ生き物大好き者」では、それぞれの生態や進化の過程を写真や図で説明する。
ユーチューブでは、チョウザメの人工繁殖やウナギの人工種苗の生産などの研究の様子を公開。サバを使った缶詰製造など北大の実習を疑似体験できる。
ラスボスの取り組みは、学内外で好評だ。「時間や場所に縛られず、いつでも興味のある研究に触れることができるのはうれしい」と話すのは、北大水産学部4年の蒲惟吹(かばいぶき)さん(21)。同4年の藤本一晶さん(24)も「他大学の学生も利用していると聞く。充実した内容」という。
学習塾道内大手の練成会グループ(札幌)に依頼したアンケートでは、ラスボスを利用した高校生から「イカの色素胞について調べてみたい」「海の解明に向けての技術開発に驚いた」などの声があり、手応えを得た。
ラスボスは英語や中国語など多言語にも対応し、海外の若い人材の関心を高める狙いも。海は身近でありながら、解明されていない謎が多岐にわたるという向井教授。「この取り組みをあらゆる人々に、海の学問に興味を持ってもらえるきっかけにし、函館で研究をしたいという思いにつながれば」と期待する。
(提供:北海道新聞)
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