
進化する除雪 IT活用
2022年02月19日
この冬、記録的な大雪に見舞われた北海道。交通機関がまひし、幹線道路や生活道路に大きな雪山が連なり、市民生活には多大な影響が出ている。そんな現状を解決しようと、人工知能(AI)や高性能センサーなど情報通信技術(ICT)を活用した「スマート除雪」が注目されている。
1月下旬。夕張市のテストコースを実験用のロータリー除雪車が走る。運転手がハンドルやアクセルに触れぬまま、除雪車は雪山を砕きながら迷いなく進む。基準として走行した白線上からそれることなく「自動除雪」に成功した。
高速道路の除雪を行う東日本高速道路(NEXCO東日本)北海道支社では、作業人員の省力化のため、自動除雪システム「ASNOS(アスノス)」の開発を進めてきた。衛星利用測位システム(GPS)よりも誤差の少ない準天頂衛星「みちびき」と、地形やガードレールなどの情報が入力された高精度三次元地図情報を活用することで、誤差数センチ単位の正確さで自動除雪を可能とした。
開発の背景には、除雪人員の高齢化や担い手不足問題がある。札幌市によると除雪オペレーターの人員は2037年までに約4割減少すると推計されている。
小樽市のベンチャー企業「BaySherwood(ベイシェアウッド)」が開発する除雪マッチングアプリ「SnowBell(スノーベル)」は、スマホなどで除雪の依頼者と作業者を結びつけるサービスだ。来冬の運用開始に向け、試験運用を続けている。除雪が困難な高齢者や除雪時間のない会社員らと、収入を得たい学生や若者を結びつけたいと考案した。試験運用で利用した引地親(ひきちちかし)さん(81)は「高齢者がやると大変な雪かきも、若い人がやるとあっという間。大雪の日に頼りになる便利なサービスだ」と話す。
ロボット工学の研究を行う北海道大学の江丸貴紀(えまるたかのり)准教授は自動運転技術を積雪環境に活用し、除雪の支援や自動化に向けた研究を進めている。車両に三次元距離データを取得するセンサー「LiDER(ライダー)」や熱を感知するサーモカメラを設置し、除雪箇所の判定、歩行者や障害物の認識をすることによる安全性の確保や作業効率化の実証実験を続けている。
江丸准教授は「人口減少や高齢化などで、除雪作業員の不足が予測される。従来の除雪手法から、ICTを活用した効率的な除雪にシフトしていく必要がある。法整備など課題は山積だが技術開発を急ぐ必要がある」と話す。
(提供:北海道新聞)