
「開拓の村」改修、光る職人技 旧近藤染舗、屋根の板のゆがみ微調整 旧小樽新聞社、軟石外壁のひびに樹脂
2022年07月17日
道内の貴重な建造物を、移築復元・再現した野外博物館「北海道開拓の村」(札幌市厚別区)で、旭川市の「近藤染工場」の建物だった「旧近藤染舗」と、北海道新聞社の前身のひとつにあたる「旧小樽新聞社」の大規模な改修工事が行われている。伝統的な技法と現代の技術を組み合わせ、道内の職人が作業のほとんどを担っており、担当者は「今後の維持管理を見据えた試行的な取り組みだ」と話す。
道の事業で、山崎建設工業(札幌市)、アトリエアク(同)、武部建設(三笠市)が技術提案した。
旧近藤染舗は明治期から続く染め物店で、同博物館に移築されたのは、1913年(大正2年)に建築された店舗兼住宅。明治期から昭和初期の庶民の建物で主流だった「柾葺(まさぶ)き屋根」を改修している。
柾葺きは、トドマツやエゾマツなどから作る、厚さ3ミリほどの板材「柾」を金属のくぎで葺きあげる技術。平取町で育った「ストローブマツ」を高熱処理して耐久性を高めた木材を使用し、道内の職人が手掛けている。3年前に他の建物の屋根を改修した際は、道外から取り寄せた木材で、岡山県の職人が作業したという。
旧小樽新聞社は、外壁に札幌軟石を貼り付けた構造で、1909年(明治42年)に建てられた。工事では、主に建物内部のしっくいの塗り替えと軟石の補修を行っている。軟石は水を吸収するため、冬に気温が下がる北海道では管理が難しい。ひびや欠損のある部分に樹脂を注入したり、各部に合わせて色を調整した補修材を塗り込んだりと、手作業で仕上げている。
武部建設の武部豊孝常務(32)は「現代の住宅では使われていない職人の技能がいかんなく発揮されている。細部まで注目してもらえたらうれしい」と話す。
内部展示を含めた再公開は本年度末になる予定。
(提供:北海道新聞)